院長ブログ

2014.07.22更新

名古屋市では、まだ梅雨明けしておりませんが、暑さは夏本番ですね。
熱中症対策、いかがですが。今年も暑い夏になりそうです。
私は、高血圧症の患者さんのうち、日頃塩分をしっかり控えておられる方には、
「夏は塩分を控えすぎないように」と、減塩対策を緩めるようにしております。
日頃の減塩の程度については、尿検査で知ることができ、とても有用です。
(本文中の高血圧の治療②を参照→)。www.muramoto-clinic.com/menu03/004/

今年の春は、新規糖尿病治療薬が、各社から発売されました。
SGLT2阻害薬といって、従来の経口糖尿病薬と違って、
尿中にグルコースを積極的に排泄させることで、血糖値を下げるものです。
この薬は、血糖を下げる機序が単純ですが、奥が深い、と感じています。
糖尿病の治療法の新しい手段を与えてくれただけでなく、
糖尿病について新しい知識をつけ加えてくれた、と思うのです。

そこで、SGLT2受容体について、勉強してみましょう。
腎臓は、糸球体という構造に流れ込んできた血液をいったん濾過し、
たくさんの物質のうち、必要なものを選んで、
もう一度血管内に吸収する仕組みを持っています。

なぜ、このような、一見面倒くさい過程を経るのか?
必要ないものを選んで濾過する(捨てる)ほうが手っ取り早いのではないか?
こんな疑問が浮かぶのも当然ですが、
「その方法では、未知の物質が腎臓に流れ込んできたときに、
濾過すべきかどうか、対処できない。
逆に、本当に必要なものだけがしっかりリストアップされており、
それらを再吸収する方が確実であるから。」
これは我々にとって、医学部の中で学習済みの重要な事実です。

さて腎臓の尿細管には、SGLT2、およびSGLT1という2種類の受容体が存在し、
いったん糸球体に濾過されたグルコースを、
積極的に血管内へ再吸収する役割を担っています。
この結果として、健康人では尿にグルコースは排泄されないのです。
グルコースが再吸収されるのは、体にとても必要なものだからです。

ところで今日でも、人間はそもそも糖質を摂取する必要はない、として、
厳しい糖質制限食を続ければ健康で長生き、と主張している人達がいます。
実際、半年ちかく前のテレビ番組に出演された某医師が、「炭水化物は毒」と
主張されている様子を、動画サイトで拝見しました。
テレビによく出演される有名医師や美食家が数人参加した団体もあるようです。
これらこそ、前回のブログと同様に、「皆さんを惑わせる怪しい情報」、ですね。
なにしろテレビは影響力が強いので、注意が必要です。

もしも糖質(炭水化物)が人間にとって必要ないならば、
上に述べた腎臓の働きが、矛盾していることになりますね。
しかも、糖尿病になった患者さんにおいて、このSGLT2受容体は、
健康な人よりも増加している
ことが知られています。
糖尿病予備軍から糖尿病になっていく過程で、
尿細管に通常よりもたくさんのグルコースが毎日流れてくるため、
これをしっかり血管内に戻そうとして、受容体の数が次第に増えていったのです。

糖尿病の状態では、血管内が危機的な高血糖であるわけですから、
受容体の数が増えなかったとすれば、尿にどんどん尿糖が出て、
高血糖を少しでも緩和できるというのに、腎臓はそのような行動をとらない。
なるべくグルコースを血管内に戻すべく、頑張っていることになります。
この事実も、グルコースが大切なエネルギー源であることを示しています。

しっかり考察すれば、こういった真実は比較的簡単に見えてくるものです。
何か新しいことを耳にしたら、常に「眉にツバをつける」感覚で、
一歩ひいて考えることをお勧めします。
SGLT2阻害薬をどう使うべきかは、後ほど述べます。

愛知県名古屋市千種区にある内科で食事療法による高血圧や糖尿病治療なら
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投稿者: むらもとクリニック

2014.07.07更新

あれこれあって、8週間ぶりとなりました。今回は前置きなく、本題に入ります。
ちょっと難しいかもですが、よろしく。

「人間ドック学会が打ち出した新健康基準」の記事が踊ったのは、
去る2014年4月5日の各新聞の朝刊でした。これ以来、診察のたびに
あの基準はどうなんですか、と訊かれることが多々あり、うんざりでした。
なので、いったいどんな発表であったのか、調べてみました。
結果、人間ドック学会の発表には一定の筋が通っていましたが、
それを報じた新聞記事にはおおいに問題があったことがわかりました。
ここでは、「血圧の基準値」に絞って述べたいと思います。

人間ドック学会は、ドックを受けた150万人から、脂質や血糖値などの異常がなく、
まだ医療機関を受診していない人々の血圧の分布を調べたのです。
それこそ収縮期血圧が90mmHgくらいから200mmHgぐらいまで、
様々な人がいたと思いますが、これらを仕分けして、平たく言えば、
「あなたは血圧が高いグループだから高血圧、あなたは普通だから正常血圧」
と、統計学的に分類してみたわけです。

適切な例えではないかも知れませんが、高校に入学してきた生徒を、
成績順にクラス分けしただけのことです。
これにどれほどの意味があるか、考えてみませんか。
高校にとっては、生徒たちがこのあとどんな進路を歩み、
どんな人生を送るかに関心があるはずです。
つまり、クラス分けしたら、その後の追跡調査が大切だ、ということです。

そもそも高血圧というのは、放置すると脳卒中や心筋梗塞の発症、
腎機能の低下といったことが問題だから、治療が必要なのでしたね。
わが国でも、久山町研究という、生活習慣病と各種の合併症との
関係を調べた、世界に誇るデータが蓄積されており、
その中で、収縮期血圧が140mmHgを越えると脳卒中の発症が
明らかに増加する事実が、すでに1993年に証明されていました。

この他にも世界中で同じ内容の研究結果が多数あります。
専門用語では、前向きコホート研究、と言います。
高校生の行く末の追跡調査は、せいぜい5年から10年くらいでしょうが、
こういった医学的な前向きコホート研究の結果を出すには、
それこそ30年間ほどの追跡調査が必要となり、
前述の久山町研究の結果も、実に32年間の追跡調査の結果なのです。

こんな労力
を費やして出された結果のことを、エビデンス(証拠)と呼んでおり、
証拠に基づく医療(evidence-based medicine)が一般化しています。
人間ドック学会が出した147mmHg、という値は、
こんな歴史的な証拠をくつがえすだけの根拠はないですよね。
各新聞の記事は誤報であると、はっきり書いてくれているサイトも見つかりました。
http://gohoo.org/alerts/140415/

実は、ドック学会の理事長先生は、追跡調査が必要、と述べていたのに、
各紙はこれを省いて、あたかも基準が変わったかのように報じたわけです。
なので一般の皆さんが勘違いするのは当然だったかもしれません。
本当は、高血圧の診断基準は、何も変わっておりません。
この報道の後、あるTV番組の中で、某有名タレントさんが、
「無意味な治療を受けていた!」と言って憤慨していましたよ、と
当院の患者さんが教えてくれました。
調べてみたらこれは深夜番組のようでしたが、もしかしたら
このタレントさんの発言を聞いて、降圧剤服用をやめてしまった方が
あったかも知れない、と考えると・・・

新聞記事が正しいとは限らない、というのは、
皆さんにとってショックでしょうか。あるいは周知のことでしたでしょうか。
まあ、これに限らず、皆さんを迷わせてしまう情報は氾濫していますね。
これについては次回以降で。

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投稿者: むらもとクリニック

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