メタボリック症候群

メタボリックシンドロームとは?

メタボリックシンドロームとは?

メタボリックシンドロームは、日本語に直訳すると「代謝症候群」ですが、「内臓脂肪症候群」と言い換えることもできます。「単純な肥満のこと」と勘違いされている方が多いのですが、そうではありません。
メタボリックシンドロームは、内臓脂肪による肥満が原因で、さまざまな生活習慣病にかかってしまう人を指します。それには高血圧や糖尿病、高脂血症などが挙げられますが、多くの病気は自覚症状が乏しいため、つい放置されがちです。
そうして病気が進行すると、動脈硬化から心筋梗塞や脳梗塞といった重大な合併症が引き起こされる可能性があります。
従って、なるべく若いうちに、このような悪循環を断ち切ることが大切です。特に注意すべきは、たとえば10代~20代で肥満が進行した人です。適切な体重コントールをしないと、加齢が進んだときに、上記のような病気にかかるリスクが多いといえます。
しかし、高齢になってくると、むしろ現在の体重と筋力を保つことの方が重要になってきます。その根拠として、近年注目されている「肥満パラドックス」の概念があります。スリム体型の方は必ずしも長寿ではなく、むしろやや肥満体型の方が長寿であるという、意外なデータが存在するのです。そのため当院では、やせることによるメリットが大きいと考えられる患者さんのみに減量指導を行います。やせる必要のない患者さんには、減量することによるデメリットを説明し、むしろ体重を増加させる指導を行う場合もあります。適切な体重と筋力を保つことは、高齢になってから襲ってくることが多い病気、すなわち癌と肺炎という二大疾病に打ち克つ力を蓄えることにつながるのです。
以上の理由から、当院では患者さま一人ひとりの病歴や家族歴をていねいに聴取することを心掛けています。そして、患者さまごとに適切な治療の判断を行っています。
特に、若いのに血圧が高い人は、動脈硬化のリスクが高いといえます。そのため、重点的な指導を心掛けています。

Q

どんな方がメタボリックシンドロームになりやすいですか?

A

メタボリックシンドロームになる原因は、食習慣の乱れと運動不足ですが、食習慣の乱れが多くの比重を占めるといえます。
典型的な事例は、いわゆる「食べ過ぎ」(過食)と「早食い」です。深夜に食事をとるのも要注意でしょう。
食べ過ぎの人が好む食事は、丼物やカレーライス、チャーハン、ラーメンなどで、あまり咀嚼せずに、一気にかき込むタイプが多いことが特徴です(しかも高カロリー)。これらを遅い時間に食べてすぐ就寝するような日常生活を送っている人は、メタボリックシンドローム一直線といえるでしょう。
その一方で、近年では「夕食に白米を食べなくても太ってしまう」という方も少なくありません。こういった方は、野菜などの食物繊維や発酵食品の摂取が不足していて、太りやすい体質をつくっている可能性があります。
また、運動不足も大きな要因となりますので、生活習慣をトータルで改善する必要があります。

Q

メタボリックシンドロームの診断基準を教えてください。

A

日本におけるメタボリックシンドロームの診断基準は、以下のようになっています。

(1)ウエスト周囲径(へその高さの腹囲)が、男性85cm/女性90cmを超えている。これは、内臓脂肪が蓄積されていることを意味します。

(2)血圧・血糖・血清脂質の3つの数値のうち、2つ以上が基準値を超えている(高血圧、高血糖、脂質代謝異常のうち、いずれか2つないし3つが当てはまる)。基準値はこちら 全国健康保険協会 参照


(1)の条件にはあてはまるが、(2)の条件に当てはまらない人を「単純性肥満」といいます。
また、LDLコレステロール(悪玉コレステロール)の数値は、メタボリックシンドロームの診断基準には考慮されていないので注意しましょう。

Q

内臓脂肪蓄積型の肥満が怖い理由はなんですか?

A

内臓脂肪蓄積型の肥満が怖い理由は、肥大した脂肪細胞から生み出される「悪玉サイトカイン(悪玉ホルモン)」が、体内でさまざまな悪さをするからです。

悪玉サイトカインの働き
  • 血栓をつくりやすくする
  • インスリン抵抗性を起こす
  • 血圧を上昇させる

それに対して、内臓脂肪が蓄積すると、善玉サイトカインは減少します。その結果、高血圧や糖尿病、高脂血症などの生活習慣病が引き起こされるのです。
メタボ体型で健康に不安がある方は、少しでも早く診察を受けることをおすすめします。

メタボリックの予防・改善策

予防・改善策
予防・改善策

メタボリックシンドロームの予防・改善には、何よりも生活習慣の改善が大切です。規則正しい食事や睡眠、適度な運動、ストレスの少ない生活などを心掛けましょう。
中でも、最重要ポイントは食習慣です。食事のときは野菜を最初に摂取しましょう。食べるときは、よく噛んで、ゆっくり食べることです。一口に対して30回の咀嚼が、一つの目安となります。そのような習慣が身に付いた人は、それほど肥満になるリスクはありません。また、高カロリーな食事にも要注意です。
これらの予防法は、きわめて単純なものです。しかし、つい忘れがちなものともいえます。とにかく諦めず、根気よく継続することが大切です。

Q

むらもとクリニック様で受けられる検査・治療について教えてください。

A

当院では、「高血圧」、「糖尿病」、そして「高脂血症」の3つの症状について適切な検査を行い、その検査結果から総合的に判断し、メタボリックシンドロームに関する治療を行います。

高血圧

高血圧の診断基準は、医療機関や検診機関での収縮期血圧が140mmHg以上、または拡張期血圧が90mmHg以上となっています。実際には治療が必要かどうか判断するため、家庭血圧測定を基本としていますが、必要に応じて体に血圧を自動的に測定する器械を装着する「24時間自由行動下血圧測定」を行っています。1日の血圧の状態を把握することで、脳卒中などにつながる危険度を診断します。
高血圧の基準値はこちら 日本人間ドッグ学会 参照

糖尿病

当院では、血糖値とHbA1c値(約2ヶ月間の平均血糖値の目安)をスピーディーに測定することができます。
また、必要に応じてブドウ糖負荷試験を行います。これは、75gのブドウ糖を炭酸水で溶かしたものを飲み、30分後、60分後、120分後までの血糖値の推移と、分泌されたインスリン値の推移を評価するものです。

高脂血症
高脂血症の診断は、通常は絶食時の採血検査で行いますが、食後の中性脂肪値を知ることにも意義があるため、あえて食後に採血する場合もあります。高脂血症の合併症として、肥満あるいはアルコール摂取による脂肪肝が疑われる場合は、腹部エコー検査にて診断をしています。
睡眠時無呼吸症候群
その他、肥満に合併する疾患として「睡眠時無呼吸症候群」も重要であり、当院ではこれを診断する検査も可能です。睡眠時の呼吸状態と血中酸素飽和度を記録できる機器を装着していただき、ご自宅で検査していただきます。
治療

「高血圧」「糖尿病」「高脂血症」の3つの検査を行い、そのうち2つ以上で異常値が出た場合、メタボリックシンドロームと診断されます。
比較的軽症の患者さまは、食事運動療法を基本とします。このように、必ずしもお薬を使用せず、生活習慣の改善を前提とした経過観察が主体となる場合もあります。ただし2~3ヶ月間の経過観察を経て、改善が見られない場合は、投薬治療に踏み切る場合もあります。
比較的進行した患者さまは、食事運動療法に加えて、最初から投薬治療を併用し、早期の改善を目指します。

お薬

糖尿病の治療薬には「メトホルミン」を優先して使用しています。
高血圧の治療薬はさまざまですが、主として「ARB(アンギオテンシンⅡ受容体拮抗薬)」や「カルシウム拮抗薬」を使用します。いずれも実証効果に優れていることがわかっています。
高脂血症の治療は食事運動療法が基本となりますが、改善が見られない場合は「フィブラート系薬」などを使用します。